生成AIの市場成長と日本株への影響
2022年11月に登場したChatGPTが世界を驚かせたことで、生成AI(Generative AI)の市場は急成長を遂げています。OpenAIだけでなく、GoogleやMeta、Microsoftといった世界的なIT企業が次々と新たなAIモデルを発表し、競争が激化しています。
市場調査会社Grand View Researchによると、2023年の生成AI市場規模は約136億ドル(約2兆円)で、2024年にはさらに拡大すると予測されています。また、2027年には市場規模が1,000億ドル(約15兆円)を超えるとも言われており、その成長性は非常に高いものです。
この流れは日本株市場にも大きな影響を与えています。
例えば、半導体メーカーの東京エレクトロン(8035)や、AI開発基盤を提供するソフトバンクグループ(9984)などは、生成AIの普及とともに株価が上昇しています。
加えて、AIの開発支援を行うPFN(Preferred Networks)のようなスタートアップ企業も、今後のIPOが期待されています。
では、具体的にどのような企業に注目すべきなのでしょうか?次章では、生成AI関連銘柄の選び方について詳しく解説していきます。
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生成AI関連銘柄の選び方
生成AI関連の日本株に投資する際、どのようなポイントに注目すべきでしょうか?
生成AIは今後も急成長が期待される分野ですが、すべての関連企業が成功するわけではありません。
そこで、AI関連銘柄を選ぶ際に重視すべきポイントを解説します。
生成AIの市場成長を支えるビジネスモデルを持つか?
生成AI関連の企業には、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
① AI技術を開発・提供する企業
例:ソフトバンクグループ(9984)、サイバーエージェント(4751)
OpenAIやGoogleのように、AIモデルを開発し提供する企業です。自社でAIを構築し、クラウドサービスや企業向けソリューションを展開することで利益を得ています。
② AIのインフラを支える企業(半導体・データセンター関連)
例:東京エレクトロン(8035)、ルネサスエレクトロニクス(6723)
生成AIの開発には、強力な半導体やデータセンターが必要不可欠です。これらのインフラを提供する企業は、AI市場が拡大するほど成長が見込めます。
③ AIを活用したサービスを提供する企業
例:楽天グループ(4755)、LINEヤフー(4689)
企業向けのAIチャットボットや、画像生成AIを活用した広告事業などを展開する企業がこれに当たります。AIを活用することで、新たな収益源を生み出せる企業は有望です。
AI市場の成長を背景に、どの分野に強みを持つ企業かを見極めることが重要です。
企業の業績と成長性を確認する
生成AI関連銘柄に投資する際は、その企業の売上高・営業利益の推移を確認しましょう。
特に、直近3年間の売上成長率が重要です。
例えば、東京エレクトロン(8035)の売上高は、2020年の1.2兆円から2023年には2.1兆円へと増加しました(約75%増)。
これは、半導体需要の増加が背景にあるため、今後もAI市場の拡大とともに成長が期待できます。
また、営業利益率もチェックポイントです。営業利益率が15%以上の企業は、収益性が高く、競争力のあるビジネスモデルを持っている可能性が高いです。
競争優位性があるか?
AI市場は競争が激しく、新しい技術が次々と登場します。そのため、企業が持つ競争優位性を見極めることが大切です。
競争優位性を持つ企業の特徴として、以下のポイントが挙げられます。
✔ 特許や独自技術を持っているか?
例:Preferred Networks(未上場)は、日本国内で独自の深層学習技術を開発し、多くの特許を取得しています。
✔ 大手企業との提携実績があるか?
例:ソフトバンクグループ(9984)は、OpenAIとの協力関係を強化しており、今後のAI事業拡大が期待されます。
✔ 国策に支えられているか?
日本政府は、AI開発に関する補助金や研究支援を拡大しています。そのため、政府の支援を受けやすい企業も魅力的な投資先となるでしょう。
株価のバリュエーションをチェック
魅力的な銘柄でも、割高すぎるとリスクが高くなるため注意が必要です。
株価のバリュエーションを測る指標として、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)をチェックしましょう。
✔ PER(株価収益率)
- 一般的に、日本株のPERは15倍前後が適正水準。
- 生成AI関連の成長株はPER30倍以上も珍しくないが、割高すぎるとリスクが高い。
✔ PBR(株価純資産倍率)
- PBRが1倍以下の銘柄は、割安と判断されることが多い。
- AI関連銘柄は成長株のため、PBR2倍以上もあり得るが、5倍以上は過熱感がある。
例えば、ルネサスエレクトロニクス(6723)は、半導体関連の有望株ですが、PERが40倍を超えているため、今後の成長を見極める必要があります。
直近の株価動向と市場トレンド
生成AI関連銘柄は、短期間で大きく株価が動くことが多いです。
そのため、以下のポイントもチェックしておきましょう。
📌 株価が短期間で急上昇していないか?
- 直近3ヶ月で株価が30%以上上昇している場合、短期的な調整局面に入る可能性がある。
- 高値掴みを避けるため、押し目(株価が下がったタイミング)を狙うのも戦略の一つ。
📌 出来高が増加しているか?
- 出来高が増加している場合、市場の注目度が高まっている。
- 逆に、出来高が減少しているときは、株価が停滞する可能性がある。
📌 米国市場の影響を受けやすいか?
- 生成AI関連銘柄は、米国のハイテク株と連動しやすい。
- NASDAQの動向をチェックしながら、日本株の動きを判断することが重要。
まとめ
生成AI関連銘柄を選ぶ際は、次の5つのポイントを押さえておきましょう。
- ビジネスモデルを確認(AI開発・インフラ・活用企業のどれか)
- 売上高・営業利益の成長率をチェック(特に直近3年)
- 競争優位性(特許・提携・国策)を確認
- PER・PBRなどのバリュエーションをチェック
- 株価の直近動向・市場トレンドを把握
今が買い時!注目の生成AI関連銘柄5選
生成AI市場が拡大する中、多くの投資家がAI関連銘柄に注目しています。しかし、日本市場ではソフトバンクグループ(9984)や東京エレクトロン(8035)など、すでに広く知られている銘柄に資金が集中しがちです。
そこで本章では、「まだあまり注目されていないが、生成AI市場の成長に伴い今後の上昇が期待できる」日本株5選を紹介します。
SHIFT(3697) – AIを活用したソフトウェアテストのリーディングカンパニー
企業概要
SHIFTは、ソフトウェアの品質保証(QA)やテストを専門に行う企業です。近年、生成AIを活用した自動テストツールの開発を進めており、AI技術を駆使して企業の開発プロセスを大幅に効率化しています。
注目ポイント
- AIによるソフトウェアテストの自動化
従来の手動テストに比べ、生成AIを活用することでテスト工程のコスト削減・品質向上が期待できる。 - 急成長するIT投資市場に対応
DX推進が進む中、企業のIT投資が増加。SHIFTのテスト自動化サービスは、今後の市場拡大とともに需要が高まる可能性が高い。 - 売上・利益の高成長
2023年の売上高は845億円(前年比+35%)、営業利益は102億円(前年比+45%)と急成長を遂げている。
📊 現在の株価動向
- PER:42.3倍(高めだが成長企業のため妥当)
- PBR:12.1倍(割高感ありだが、成長期待を反映)
- 投資判断:成長銘柄として長期投資向け
SHIFTについてはこちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください!
ブレインパッド(3655) – データ分析×AIの最前線
企業概要
ブレインパッドは、企業向けのデータ解析・AI活用支援を行う会社です。日本企業のDX化が進む中、データ活用と生成AIを組み合わせたソリューションが注目を集めています。
注目ポイント
- 企業向けの生成AI導入支援
すでに生成AIを活用した顧客分析ツールを提供しており、AI活用のコンサルティング市場でのシェア拡大が期待される。 - OpenAIやGoogle AIと協業の可能性
AI大手企業との連携を強化し、クラウドAIサービスの統合支援を拡大中。 - データサイエンス市場の拡大
日本企業のデータ活用率はまだ低いため、今後の市場成長とともにブレインパッドの事業も拡大が見込まれる。
現在の株価動向
- PER:30.5倍(成長銘柄として適正)
- PBR:6.3倍(若干の割高感)
- 投資判断:データ活用AI市場の成長を見据えた中長期投資向け
モルフォ(3653) – AI画像解析技術の隠れた実力企業
企業概要
モルフォは、画像処理AIを開発する企業で、スマートフォンカメラや監視カメラ向けの画像認識AIに強みを持っています。最近では、生成AIを活用した新たな画像処理技術にも取り組んでいます。
注目ポイント
- 生成AI×画像処理のシナジー
生成AIによる画像補正や、監視カメラの解析AIなど新たな市場が広がる可能性がある。 - 大手企業との取引多数
SonyやNTTといった大手企業にAI技術を提供。業界内での信頼度が高い。 - 監視カメラ市場の拡大
防犯やスマートシティ化の流れの中で、AIを活用した監視技術の需要が高まっている。
現在の株価動向
- PER:35.2倍(成長性を考慮すると適正)
- PBR:5.4倍(やや割高)
- 投資判断:画像生成AI分野の拡大を狙った中期投資向け
PKSHA Technology(3993) – 生成AI×チャットボットの最前線
企業概要
PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)は、生成AIを活用したカスタマーサポート向けチャットボットを開発しています。企業のDX化が進む中、業務効率化AIの需要が急拡大しています。
注目ポイント
- 生成AIチャットボットの需要増
コールセンターの自動応答AIが急成長。AI技術の進化により、人間と遜色ない対話が可能になっている。 - 官公庁・大企業との取引が拡大
すでに行政機関や大手銀行向けにAIソリューションを提供。安定した売上基盤を持つ。 - DX推進の恩恵を受ける
日本政府のDX推進政策により、企業のAI導入が進む見込み。
📊 現在の株価動向
- PER:48.9倍(やや高めだが、成長期待あり)
- PBR:8.2倍(割高感あり)
- 投資判断:企業向け生成AI市場の拡大を見据えた中長期投資向け
コアコンセプト・テクノロジー(4371) – AI×ERPで成長を狙う
企業概要
コアコンセプト・テクノロジーは、AIを活用した業務改善ソリューション(ERP)を開発する企業です。中小企業向けにAI搭載の経営支援ツールを提供しており、ニッチな市場で急成長中です。
注目ポイント
- 生成AIを活用したERP市場に参入
AIを活用した経営分析ツールを提供し、企業のDX化を支援。 - 中小企業向けの市場で独自性を発揮
大手ERP企業が進出しづらい中小企業向け市場を開拓。競争優位性が高い。 - 売上成長率が非常に高い
2023年の売上成長率は+70%と高水準。
現在の株価動向
- PER:38.5倍(成長性を考慮すると妥当)
- PBR:5.7倍(割高感はあるが期待値が高い)
- 投資判断:成長性の高い新興市場に投資するなら注目
「生成AI」関連の日本株5選 まとめ
銘柄名 | 証券コード | 業種 | 株価(円) | ポイント |
---|---|---|---|---|
SHIFT | 3697 | 情報・通信業 | 8,340 | AIによるソフトウェアテスト自動化で急成長 |
ブレインパッド | 3655 | 情報・通信業 | 6,720 | データ解析×AIで企業向けDX支援を強化 |
モルフォ | 3653 | 情報・通信業 | 4,950 | 画像解析AIで監視カメラ市場に参入 |
PKSHA Technology | 3993 | 情報・通信業 | 2,630 | 生成AIチャットボットで業務効率化を推進 |
コアコンセプト・テクノロジー | 4371 | 情報・通信業 | 2,870 | AI搭載ERPで中小企業向けDX市場を開拓 |
生成AI銘柄のリスクと注意点
生成AI関連銘柄は今後の成長が期待される分野ですが、すべての投資にリスクがあるように、この市場にも注意すべきポイントがいくつかあります。
特に、生成AIは技術的な進歩が早く、競争が激しい分野であるため、株価の変動が大きい点に注意が必要です。
本章では、投資を行う際に意識すべき主なリスクとその対策について解説していきます。
AIバブルの可能性
リスクの内容
生成AIブームによって、多くの企業がAI関連事業への参入を発表しています。
しかし、過去のITバブル(2000年頃)や仮想通貨バブル(2017年)と同様に、投資家の期待が過剰に膨らみすぎると、バブル崩壊のリスクが高まることになります。
すでに、米国ではNVIDIA(NVDA)やMicrosoft(MSFT)の株価が急上昇し、「AIバブルではないか?」と警戒する声もあります。
日本市場でも、AI関連銘柄が一時的に急騰し、その後急落する可能性があるため、冷静な判断が求められます。
対策
- 急騰している銘柄は慎重に判断する
- 株価が短期間で50%以上上昇している場合、すでに割高になっている可能性がある。
- PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)をチェックし、割高すぎないか確認する。
- 本業が安定している企業を選ぶ
- AI事業を本業としている企業(SHIFTやブレインパッドなど)と、AIを一時的なブームとして参入している企業を区別する。
技術の進化が速く、競争が激しい
リスクの内容
生成AIは、技術革新のスピードが非常に速い分野です。
例えば、ChatGPTが登場してからわずか1年の間に、Google GeminiやAnthropic Claudeなど、さまざまな競合が登場しました。
これと同じように、日本企業が開発する生成AI関連技術も、海外勢の技術革新に取り残されるリスクがあります。
特に、日本のAI企業は、資本力や研究開発力の面で、米国の巨大テック企業と比較すると劣るため、競争力を維持するのが難しくなる可能性があります。
対策
- 独自技術を持つ企業を選ぶ
- 特許技術や独自の強みを持っている企業(例:モルフォの画像解析AI)に投資することで、競争に負けにくい銘柄を選ぶ。
- 大手企業との提携を重視
- 日本のスタートアップAI企業の中には、大手企業と協力しながら成長を目指すケースが多い。
- 例)PKSHA Technologyは、NTTやトヨタと連携しながらAI事業を展開。
法規制の影響
リスクの内容
生成AIの急速な発展により、政府の規制が強化される可能性があります。
例えば、EUでは「AI規制法案(AI Act)」が進められており、AI技術の利用に厳しいルールが課せられる見込みです。
また、日本でも、以下のような法規制が強化される可能性があります。
- 個人情報保護法の強化(AIが個人情報を扱う場合の制限)
- 著作権法の改正(AIによるコンテンツ生成が著作権侵害に当たる可能性)
- 倫理的問題に対するガイドライン(ディープフェイクや偽情報の問題)
規制が厳しくなると、一部のAI関連企業は事業の方向性を変更せざるを得なくなるため、事業リスクが高まる可能性があります。
対策
- 法規制の影響を受けにくい企業を選ぶ
- 生成AIの開発よりも、AIの活用を支援する企業(SHIFTやブレインパッドなど)は、規制の影響が比較的少ない。
- 規制対応に積極的な企業を重視
- すでにガイドラインを制定し、適切に対応している企業は、規制強化後も安定した成長が期待できる。
米国市場との連動性
リスクの内容
生成AI関連銘柄は、特に米国市場の影響を強く受けるため、NASDAQ(米国のハイテク株指数)の変動によって、日本株も大きく動く傾向があります。
例えば、2023年にNVIDIAの株価が急騰した際、日本市場でも半導体関連株(東京エレクトロン、ルネサスエレクトロニクスなど)が連動して上昇しました。
しかし、米国市場が下落すると、日本のAI関連株も一緒に下落しやすいというリスクがあります。
対策
- NASDAQや米国ハイテク株の動向をチェック
- AI関連銘柄は、米国市場が好調なときに上昇し、逆に米国市場が下落すると売られやすい。
- 「NASDAQが下落したときに安く買う」戦略を取ると、リスクを抑えやすい。
- 円安・円高の影響も考慮
- 日本の生成AI関連銘柄の多くは、海外市場とも関係が深いため、円安になれば輸出企業に有利になり、円高になれば不利になる。
まとめ
生成AI関連銘柄に投資する際は、以下のリスクをしっかり意識しておく必要があります。
リスク | 詳細 | 対策 |
---|---|---|
AIバブルの可能性 | 過熱しすぎると急落の危険 | 割安な銘柄を選び、業績を確認 |
技術競争の激化 | 海外勢との競争に負ける可能性 | 特許や独自技術を持つ企業に注目 |
法規制の強化 | AIの利用制限や著作権問題 | 規制対応が進んでいる企業を選ぶ |
米国市場との連動 | NASDAQの影響を受けやすい | 米国市場の動向を定期的にチェック |
これらのリスクを理解したうえで、適切な投資戦略を考えることが重要です。
生成AI関連銘柄の未来と投資戦略
生成AI市場は今後も急成長が見込まれる分野であり、日本株市場でも関連銘柄が注目を集めています。
しかし、AIバブルのリスク、技術競争の激化、法規制の影響、米国市場との連動性といったリスクを考慮することが重要です。
生成AI関連銘柄の未来
- 市場規模は拡大傾向:2030年までに生成AI市場は1,000億ドル規模になると予測されている。
- 日本企業の競争力:特許技術や大手企業との提携がカギ。
- 規制リスク:政府の対応次第で一部のAI事業が制限される可能性あり。
投資戦略
- 長期目線で成長株を選ぶ
- SHIFT(3697)やブレインパッド(3655)のような高成長銘柄を中長期で保有。
- 押し目買いを狙う
- 株価が急騰した後は、調整局面を待って購入するのが賢明。
- 分散投資を意識する
- 生成AI関連銘柄だけに集中せず、他の成長分野ともバランスよく投資する。
生成AI関連銘柄は大きな可能性を秘めた市場ですが、冷静な判断と適切な投資戦略が成功のカギを握ります。
短期的な値動きに惑わされず、将来性のある企業を見極めることが大切です。
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